マンション管理組合の監事を解任する方法

マンション管理組合の役員である理事長同様に監事を解任したいケースがある。理事長との結託により管理組合が無力化されているようなケースや、癒着や横領の疑いがあるようなケースが浮かぶ。実際に、会計理事単独によって横領事件が起こされるようなケースがあっても、監事がきちんと機能していればコトが大きくなる前に未然に防げたモノもある。監事は管理組合運営の最後の砦とも言える重要なポジションだ。それゆえに機能していないのであればすぐに解任した方がベターかもしれない。

 

監事の役割

解任に誘導していくためのアクションを起こす前に、監事の役割を知っておく必要がある。解任しようにも具体的な理由が必ず必要となるからだ。非論理的な感情論だけでは、モノゴトは前に進まない。下記に標準管理規約に示されている監事の役割を記す。

 

第41条(監事)

監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。
監事は管理組合の業務の執行及び財産の状況に不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。
監事は、理事会に出席して意見を述べることができる。 

監査という言葉の意味は、監督し、検査するというコトだ。世間には監査法人が存在しているが、こういった法人は企業の経営状態を監督して、検査するコトで企業運営の健全性を見張っている。マンション管理組合の監事もまさにこれと同様の機能を果たすために設けられたポジションとなっている。

しかし、盲点となるのは「業務の執行及び財産の状況を監査し」「不正があると認めるとき」といった条件だ。そもそも、監査法人に勤めたコトもないただの自然人の人間が何を持って健全かどうかを判断するのかという大きな疑問が残る。「不正があると認めるとき」という条件に関しては、監査を担っている人間の個人的な知識量によって不正があっても見抜けない状況が生じ、監査品質が大きく左右されてしまう点が挙げられる。

 

監事の選任

解任のアクションを起こす前に、そもそも、どうやってその解任したい人間を監事というポジションに置いてしまったのか、その原点を知っておく必要がある。標準管理規約の第35条の第1項にこう記されている。

理事及び監事は、組合員の右一から、総会で選任す

この場合の総会は、議決権の過半数で可決できる普通決議を指している。過半数が賛成すれば、借金持ちだろうが、管理費滞納者であろうが監事に選任できてしまうのだ。実情としては、輪番制による定期交代で回しているケースが多いと考えられるが、根本的な原点は皆の賛成によって選任されているコトには間違いない。

監事解任の手続き

事情はともあれ、解任のアクションを起こす場合に下記の方法がある。

集会により、解任の決議をとる。

集会の決議は、選任の時同様に議決権の過半数が必要となる普通決議となるため、特別決議と比較してハードルが低い。では、理事でもない区分所有者がどうやって集会に持ち込むのかといった疑問が浮かぶかもしれないが、安心してほしい。議決権者の1/5以上の区分所有者からの集会の請求があった場合には臨時に集会を開かなくてはならないコトが区分所有法第34条にて定められている。詳しくは過去の記事を参考にしてほしい。

  • 記事リンク:臨時にマンション管理組合の集会招集をかけるには
  • ちなみに、上記に述べた集会によって解任の続きがとれるのは、標準管理規約第48条に定められている事項だ。是非とも配布されている管理規約にその条文があるか確かめてほしい。もし、書かれていなければ新しく設けるアクションが必要だ。規約の設定、変更、廃止に関しても下記の記事が参考になる。

  • 記事リンク:マンション管理規約の「設定」「変更」「廃止」のススメ方
  • 最後に

    監事を無事に解任させた後も、適任者をまた選任しなくてはならない。選任時にどうやって適切な人間を選ぶのかといった点は本質的な課題となっている。輪番制ならば、数年毎に半ば強制的に監事が交代していく。しかし、交代するまでの数年の間に決定的な共同の利益に反する事件が起こるかもしれない。

    反面、任期を決めずに「専門」として何年も同じポジションに就いてもらうのも癒着しやすいデメリットが必ず生じる。多額の着服事件が起きるケースは、一定の人間が長期間同じ職務に就いている場合が多いようだ。

    もし、アナタのマンションが管理会社と委託契約をしているなら、彼らの知識を使わない手はない。管理会社には、区分所有法や標準管理規約に精通した業務管理主任者が設置されている。基本的には、どれだけ手間を掛けずに業務をこなすかが、収益に直結する側面があるため、管理組合や区分所有者である住人からどんどん要望をしていかないと管理会社側から有機的ににアクションしてくれるケースは少ないと考えるべきだ。

    本当に現在の監査を解任するアクションを起こすのであれば、同時に監査の役割をきちんと理解するとともに、選任の仕組みから見直すコトが大切だ。可能な限り問題の根本的な部分から解決していく方が長期的な再発防止に導くコトとなる。