疲弊するマンション管理業界

日本には約2300社ものマンション管理会社が存在している。トップ15社で市場の約50パーセントを占めている状況だ。戸数にしてざっと300万戸といったところだろう。マンション管理は先の明るくない業種だと言われている。それは、建物や住人の二つの老いなどの問題が挙げられることが多いが、根本的な原因は、「お金」の問題に帰結する。

 

管理 = お金のかかるコト

 

こう考えるとわかりやすいのではないだろうか。住まいの管理には様々な作業が必要になり、それがコストを生み出す原因になっている。これはマンションに限った話ではない。戸建住宅でも同じだ。ただ、複数の他人と運命共同体となるマンションにおいては、相対的にお金の管理はより厳格になされる。

 

マンションに関わる管理業務はそもそも複雑だ。消防設備点検、エレベーター、給水ポンプ、清掃、帳簿、管理費の回収、総会、理事会・・・。細かくあげればキリがない。こういった面倒な作業に世話を焼いてくれるのが管理会社やマンション管理士だ。

 

ただし、外部サービスとなるため、言うまでもなく外注費用を要する。そもそもお金がかかる作業を外注し、さらにコストがかさむという構図だと言えよう。しかし、現状はこの形態がメジャーとなっている。区分所有法等の法的な知識が必要とされるためだ。

管理を生業としている業者は、ボランティアではなく、ビジネスとして成立させなくてはならず、他の競合と競争しなくてはならない。マンション管理業務そのものに付加価値をもたらすのは昨今では難しくなりつつある。そうすると、過当競争に発展する原理が働くようになる。

 

そして、収益性を失いつつある管理業社やマンション管理士の労働環境は悪化することに繋がる。管理業務主任者やマンション管理士の国家試験は、不動産の売買や賃貸で必要とされる宅地建物取引士の試験よりもハードルが高い。そんなプロが居る業界ながらも過当競争に見舞われつつある。これはサービス提供者側からすると非常に苦しい業界構造だと言えよう。

 

消費者側(住人側)からすると良い面はあるものの、適正なサービスは適正利益があって初めてなされる事実があることは加味しておく必要がある。安かろう悪かろうでは継続性が求められるマンション管理においては意味がないからだ。

 

このような閉塞的な状況において、何が決定的なソリューションになるのか。それは今の所不明だ。わかっていることは、より苦しい業界になり、それに影響を受けるマンションが出てくるようになるコトだと予想する。これは社会にとっては良くない流れだ。少なくとも、マンションの所有者は状況や問題を知り、可能な限り防御できる体勢を敷くことができるようにしておくべきだ。

 

巷にはこう言った状況を論理的かつ丁寧に説明してくれている書籍や雑誌はたくさんある。データに基づいているため、非常に参考になるので本屋で立ち読みでもしてみてほしい。

  • 限界マンション 次に来る空き家問題
  • 2020年マンション大崩壊(文春新書)