マンション管理士等の外部専門家活用が進まない「壁」

世間にあるマンションの8割以上が管理会社に管理業務を委託している。管理会社には当然ながらこの分野の知識や法律に明るいプロフェッショナルが在籍している。しかし、プロの定義は少々あいまい部分がある。お金をもらえるのがプロ、もらえないのがアマ。そんなことはない、価値のないプロもいれば、価値のあるアマもいるのが実情に違いない。

 

管理会社を2社同時につかうパターンは経済的な理由も手伝ってほぼ皆無だろう。ということは、管理業務を委託している管理会社は1社にお願いするコトになる。これは、良く言えば合理性の追求、悪く言えば一党独裁の状況となる。

 

世間には、管理会社以外にもマンション管理のプロは多く存在する。コンサル会社もあれば、マンション管理士といった国家資格者も日本全国に2万人ほどいる。しかし、こういった第三者機関の存在やその意義を知るマンション所有者は非常に少ない。何故か。先にも述べたように、一党独裁の悪い面によってこのような状況が起きやすくなっているからだ。

 

管理会社との契約は1年ごとに更新されるのが業界の常となっている。何も問題がなければ、毎年毎年その都度更新となる。何も考えていないマンション所有者は、更新の議題があがる度に適当に「賛成票」に入れるだけだろう。しかし、「何も問題がない」とどうやって判断できるだろうか。サービスクオリティの高さや、価格競争力は比較対象があって初めて違いがわかる。はずだ。

 

しかし、一党独裁体制ではそんな比較要素に関わる情報は事前に排除されてから情報が伝達される。考えてみてほしい、「私たちの委託サービス比較のために競合との見積を実施しましょう。」なんていうご進言ゴトが管理会社からあがってくるだろうか。否、それは絶対に無い。彼らとて民間の営利団体である以上は、稼がなくてはならない絶対的な理由がある。それを達成するためには、一党独裁体制を敷く方が合理的である。

政府主導で設置されたマンション管理士制度も、複雑化を極めるマンション管理の円滑化や高度化を目指したものとなっている。しかし、彼らを管理組合に投入することで、契約更新記録が絶たれるリスクをおかしてまで管理会社自らがそんな第三のプロフェッショナルの存在やその活用意義を教えるだろうか。例外はあるだろうが、答えはほぼ100%NOだろう。

 

この状況に加えて、管理組合がマンション管理士に仕事をお願いすると、「助言料」や「相談料」といった管理会社へ費用とは別のコストが発生することにもなるため、第三のプロの存在を知っていても二の足を踏んでしまう要素もある。であれば、現在の管理会社とうまく交渉しようという甘い考えに駆られてしまうのも無理は無い。

 

しかし、それではいけない。

 
あなたの交渉を持ちかけようとする管理会社はその道のプロだ。そんな相手とマンションに関わる知識や法律に疎いマンション所有者では交渉にならない確率の方が高い。ではどうするのか。競争の原理を取り入れながら相談するコトだ。管理会社もマンション管理士も競争に晒されている。これを念頭に管理会社とも外部専門家とも交渉すれば良い条件が引き出せる。