マンションの住人が地震に遭遇したら最初にすべきコト

日本は言わずと知れた地震大国だ。地震を起こすプレートどうしがぶつかり合ってできた島国ゆえにこの国で住む限りは地震のリスクから逃れるコトはできない。現代的な住居であるマンションは新耐震基準(1981年6月以降)で設計されている建物であればわりかし安全と言える。しかし、それでも万全ではない。熊本で起きた地震では、台湾で起きた地震のように建物の倒壊までは無いものの甚大なダメージを受けた。そう、倒壊まではなかなかないのだ、日本の場合は。あれだけの大きな地震が連続的に発生してもだ。これは日本の高度な建築技術の恩恵とも言える。他の国なら完全にアウトだ。では、地震が起きた時に何に気をつけるのか。

 

親父より強いもの

「地震、雷、火事、親父」という言葉は昭和生まれの方ならわかるかもしれない。これは世の中の怖いものベスト4だ。現代においては「親父」は怖い存在では無くなってきているような気もする。話を戻して、現実的には、地震の際に雷に撃たれる可能性は低い、、、というコトは「火事」が地震の次に怖いモノとなる。もちろんこれは津波が来ない前提としてほしい。(津波の被害は、震源地からの距離や、固有の地形、マンションの階数によって左右される。)

単なる火事ではなく、地震に起因した火災だ。なぜならば、揺れが火事を引き起こす原因となるからだ。地震が起きた時に真っ先にやっていただきたいコトは火元の心配だ。それはアナタの専有部分だけでなく、「他の住人を含めて」という点は特に強調しておきたい。大規模(歩けないほどの揺れ)の地震を感じた時は、理事などの役員は率先して各部屋に状況を聞きに回っても良いくらいだ。

なぜならば、失火責任は重過失の時にしか問えないことになっている。運悪くアナタの直下に住む部屋で揺れに起因した火事が起き、それが大規模火災につながったとしよう。バルコニーからモクモクと上がって来た煙を吸ってアナタが重篤になっても、火がアナタの専有部分にまで及んだとしても、重過失でない限りは保険でなんとかするしかないのだ。火災保険に関する情報は過去の記事を参考にしてほしい。

不可抗力によってこのようなコトが起きれば本当にやるせない。仮に保険で補修できたとしても資産価値は落ちるだろう。だからこそ、火災にならないように可能な限り初期対応を徹底するコトが重要となる。大きな地震が起きたら、せめて、隣人宅や直下の住人の家には安否確認でインタホーンを鳴らして確認しても良いくらいだ。それで仮に文句を言う人が居たとしても、これは個別の区分所有者に実施が許可されている「保存行為」の範疇なので安心してほしい。少なくとも悪意はないのだ。何よりアナタの資産である専有部分に災害が及ばないコトが確認できれば安心だ。

 

嗅覚を研ぎ澄ませ

アナタの隣人や直下の部屋から出火が無くてもまだ心配はできない。次に心配すべきは「ガス漏れ」だ。地震で躯体が揺れるコトによって、ガス管が外れたりするとガスが漏れる。日本の防災技術は世界屈指と言えるレベルなのでガス漏れを事前に検知するセンサー等が作動すればガス漏れは自動的に抑えられる。それでも例外はある。

阪神大震災では、倒壊した建物の下敷きになった人がたくさん亡くなってしまった。原因の一つにガス漏れがあったからだ。地震直後は電気もストップしていたが、本震から1時間後ぐらい(地域にもよる)に電気が復旧したことにより、断線などを起こしているところでスパークが起き、それがガスに引火し、倒壊した建物を焼き尽くすほどの火災となったケースがある。

古い一軒家に囲まれたマンションもあることから、こういった危険な状況を避けるためにも、ガス漏れがないかどうかを知るコトが重要となってくる。幸い都市ガスには”臭い”がつけられている。ガスコンロにうまく火がつかなかった時のあの臭いだ。あれは人工的につけているらしい。目に見えないガスの存在を、嗅覚に知らせるために。

そのため、地震が起きたらバルコニーで鼻を研ぎ澄ませてみるのも良いかもしれない。もし、ガスの臭いがしたなら、風上を確認を可能な限り確認してすぐにでも通報するべきだ。

 

視覚を研ぎ澄ませ

建物は揺れるときにしなる。イメージしにくいが、少し硬いこんにゃくのように。それゆえにガス管や水道管が外れたり破れたりする。そう言った物理的負荷は躯体を覆う建物の外壁にも同様に働く。現在のマンションはタイル式の外壁が多い。タイルは汚れに強く、視覚的な美しさを保つには最適な建材だ。それ故に、課税率もペンキ式の外壁に比べて高い。しかし、タイルは1つ1つが独立したものをモルタルでくっつけている。そのため、建物がしなることで剥がれやすくなり、それが滑落につながることがある。

滑落すると大変だ。マンションとは縁もゆかりもない歩行人等に怪我を負わせてしまうと、それは、滑落の原因となったマンション管理組合の責任となるからだ。損害賠償保険等でカバーできるにしても、保険は使わないで済むに越したことはない。何よりそういう事故を未然に防ぐことが大切だ。どうせ保険を使うなら、他人の怪我を治すためではなく、補修のために保険を使うべきだ。従って、第三者を事故に巻き込まないためにもタイルの剥がれそうな部分がないか最低限目視でチェックを実施すべきだ。理事会がそこまで気が回らない場合があるので、気づいた住人が確認して、理事会に届ければ良い。(理事会が対処する前提で。)

 

まとめ

地震からは逃げられない。ということは、防災しかないのだ。「防災の意識を高めよう。」というような漠然としたキャッチフレーズよりも、具体的に何をすべきかを知っておく方が有益に違いない。結局のところは、自分たちの資産は自分たちで守るしかない。自分の命と同じように。