マンション専有部分の競売請求&引渡し請求の判例

マンションの所有者に対する競売請求や賃借人に対する引き渡し請求は区分所有法の中でも特に厳しい条文となっている。所有者であれ、占有者であれ違反者として居住関係から強制的に排除される。そのため、特別決議となる議決権の四分の三以上の賛成が必要となり、違反者に対する弁明の機会まで与えなくてはならない。その上で決議を持って裁判所に提訴するコトになっている。

 
では、どう言ったケースでこのような厳しい対処が可能になるのか。管理費や修繕積立金の滞納で適応されるケースが最も有名であろう。直接的にお金に絡むコトからも、滞納への対処は非常に厳しいの腑に落ちる。しかし、実際には無形の迷惑行為によって排除されたケースもある。競売請求の条文に関しては過去の記事を参照してほしい。

 
 

目的外使用による排除

平成8年5月に東京地裁の判決にて占有者の排除が認められたケースだ。賃借人が専有部分に業務用の資材を置くなどして仕事場として使用し、様々な迷惑行為があったコトにより、特別決議に掛けられた。おそらく、資材を加工したりするなどして騒音の被害もあったはずだ。

似たようなケースとして、賃貸マンションを民泊に転用してしまうケースだ。現在の民泊は、需要があるものの社会問題を引き起こす側面があり、特区以外の地域において自治体へ届け出る必要がある。もし、そうでないならば、違反行為となるコトからも民泊を許可していない管理組合は比較的容易に排除可能であろう。

 

 

鳩への餌付け

平成7年11月に東京地裁にて管理組合の請求が認められたケースだ。こちらも賃借人ではあるが、問題なのはどのような迷惑行為をしていたかである。すなわち、賃借人でなくとも同様の判決が下りたに違いないと言える。これは、野鳩の餌付けによって汚損や悪臭、騒音等の障害が著しいコトが認められたことに起因している。

つまり、野良猫に餌付けし、同じような障害を発生させた場合に、それが著しい迷惑行為として裁判所に認められれば同じような判決が下ると考えられる。

その他

専有部分内で大声であげたり、振動をつくりだしたり、消防設備の点検を拒んだり、火災警報器を鳴らしたり、管理人室に苦情の電話をしたおしたり・・・といった完全なる迷惑行為に対して裁判所が管理組合の競売請求や引き渡し請求を認めたケースもある。要は区分所有法第6条に記されている「共同の利益に反する行為」に該当するかどうかが争点となり、管理費の滞納だけに適応されるワケではないというコトである。

知っているかどうか、知ろうとするかどうかは個人や管理組合の自由だ。しかし、明確な法律として存在している以上は、その効力を最大限に活用した方がマンション管理における秩序は保ちやすくなる側面がある。

実際に排除されるケースがあるコトを理解した住居人が、排除されるリスクまで背負って迷惑行為をエスカレートさせるとは考えにくい。マンションの管理は管理組合が主体となって実施されるべきものであるコトからも、居住者に厳しい条項やそれに纏わる判例があるコトを知らせるに越したコトはないはずだ。