マンション管理組合の理事のなり手不足対策

建物の老朽化と住む人の高齢化が同時に進行するマンション。この共同住宅を取り巻く環境において、マンション管理組合の理事のなり手不足は深刻になってきているという。これは老朽化が進む築数十年のマンションや団地だけの話ではない。

 

理事のなり手不足の原因

端的に述べると、原因は「面倒だから」に尽きる。理事長や副理事、監事といった役割の本当のあり方なんぞ知らなくても管理会社任せでどうにでもなってしまう現状がある。そもそも、各職務の果たすべき役割をきちんと把握している住人はほぼ皆無だ。どうにでもなってしまうなら「そんな知識は必要はない」という合理的な判断に至るのは自然なコトなのかもしれない。

 

無関心が引き起こす問題

世の中のたいていの事象は因果関係で成り立っている。これはマンション管理においても例外ではない。「面倒だから」にはじまる理事のなり手不足は大きな問題を引き起こすリスクに直結している。監事が機能しないコトによる多額の積立金横領事件の発生や、悪意ある管理会社によって無駄な出費を強いられるようなコトだ。積立金横領に関しては以前に書いた記事を参照してもらえると発生のカラクリが理解しやすいかもしれない。

つまるところ、問題の行き着く先は、経済的ダメージというカタチになって返ってくる。

お金は有限の生活資源であるため、ロスを排除して意味のある使い方をしなくてはならない。皆で拠出する共同資産ならなおさらだ。無慈悲に損失させられたお金を取り戻すことが非常に困難なコトから考えると、やはり、事前に予防線を張るコトがスマートなやり方だと言える。

対策方法のイトグチ

有機的に共同資産であるマンションの管理に携わってもらうには、そうなるように仕向ける仕組みが大切だ。面倒を平等化させるために、輪番制に敷いている場合がほとんどだろう。輪番制そのものは特定の理事による管理会社との癒着を避けたり、横領を画策する機会を低減する優れた面があるものの、輪番制という仕組み導入の「起点」が面倒の平等化ではやはり機能不全になることは避けられない。まずは、マンション標準管理規約に記述されている各役員の役割を見て欲しい。

 

マンション標準管理規約 第38条(理事長)

第38条 理事長は、管理組合を代表し、その業務を統括するほか、次の各の号に掲げる業務を遂行する。 一 規約、使用細則等又は総会若しくは理事会の決議により、理事長の職務として定められた事項 二 理事会の承認を得て、職員を採用し、又は解雇すること。

2 理事長は、区分所有法に定める管理者とする。

3 理事長は、通常総会において、組合員に対し、前会計年度における管理 組合の業務の執行に関する報告をしなければならない。

4 理事長は、理事会の承認を受けて、他の理事に、その職務の一部を委任 することができる。

マンション標準管理規約 第39条 (副理事長)

第39条 副理事長は、理事長を補佐し、理事長に事故があるときは、その職務を代理し、理事長が欠けたときは、その職務を行う。  

マンション標準管理規約 第40条(理事)

第40条 理事は、理事会を構成し、理事会の定めるところに従い、管理組合の業務を担当する。2 会計担当理事は、管理費等の収納、保管、運用、支出等の会計業務を行う。

マンション標準管理規約 第41条(監事)

第41条 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。2 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。3 監事は、理事会に出席して意見を述べることができる。

上記が示すように役割が定義されている。ゆっくり読めば書いてある内容は理解できるはずだ。また、これらの職務を全うするには明らかな負担が掛かるコトも一目瞭然だ。役員をやらされるのが本当におっくうになるのも理解できてしまう。このような総合的な状況を知るコトで対策の糸口が見つけやすくなってくる。

対策提案

では、これらの役員へお金という報酬を支給するインセテンィブ制を導入してみてはどうだろうか。これはあくまでも提案の1つにすぎないが、お金というインセンティブが持つ力は絶大だ。お金が絡むことで、一定の責任感が湧くことも期待できれば、非役員からの監視の目も働きやすくなるコトも期待でき、有機的なマンション管理に発展させていくコトに繋がる。

一番負担の掛かる理事長の報酬を上限として、あとの役員は理事長が受け取る報酬額の70%、60%といったカタチで仕事の負担量に見合った報酬を支払うことで公平性を図るコトができる。または、役員になった期間の毎月支払う管理費を職務に応じて減額するようなカタチで支給する方法もあるだろう。

また、どんなに負担が掛かると言っても毎日毎日やらなければならないような仕事はない。管理会社や外部の専門家と連携しながら、1ヶ月に5時間も投入しないケースがほとんどだ。仮に月に1万円の報酬があれば、年間で12万円の報酬額となり、役員を2年間全うすれば合計で24万円の生活費節約となり、無視できない金額になるはずだ。

さらに発展させ、管理会社の仕事を減らすコトで、毎月の管理会社への管理委託費用を下げるコトも検討に値する。その浮いた費用の60%なり50%の額を役員報酬に上乗せし、管理会社が実施してきた誰にでもできる仕事を内製化することで、経費節減と役員報酬の増額を図っていくコトもできてしまう。

可能であればインターネットを駆使できる若い世代が役員に混じると良いかもしれない。インターネットはわからないことを手軽かつ迅速に調べるにはとても最適なツールだからだ。マンション管理は多義に渡る情報が必要になる部分があるため、情報の武装化はこれからのマンション管理運営には必須となってくる。多くの情報があれば事前に対策を施しやすくなり、様々なリスクに対して有効な予防線を導き出してくれる。

仕組み一つでモノゴトが改善するコトは多くある。仕組みを構築する価値は大いにあるはずだ。自分たちの資産を守るために。