マンションの専有部分を「使用禁止」に追い込む条項

「共同利益に反する行為」への対応処置として、区分所有法第57条の行為の停止に関する記事を残したが、今回はさらにもう一段強力な区分所有法第58条の「使用禁止請求」について記す。

区分所有法第58条 (使用禁止の請求)

まずは条文を見てほしい。

前条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所 有者の共同生活上の障害が著しく、前条第一項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき は、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる。

前条第一項とは、同法57条にある「共同の利益に反する行為の停止等の請求」を指している。以前に記事にも記した通り、同法57条は集会の普通決議でも進めていくコトができる比較的ソフトな警告方法だ。

また、第六条第一項は同法中の「建物の管理または使用に関して区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」という内容を指している。すなわち、この区分所有法第58条の「使用禁止の請求」は、共同の利益に反し、尚且つ、行為の停止請求に応じない義務違反者を共同生活関係から排除していくための条文だ。

ポイントは裁判所に訴えることになるという点。

 

弁明の時にプレッシャーも与える

使用禁止の請求を実行していくためには、集会において特別決議と言われる議決権者の3/4以上の同意者(賛成者)が必要となるが、その決議の時にあらかじめ、その義務違反者に対して、弁明の機会を与えなくてはならない。これは、同法58条の第3項によって定められている。

この第3項が定められている理由は、最終的には裁判所の判決にもよってくる部分があるが、実質的にその義務違反者から専有部分を使う権利を取り上げるなどの理由があるが、実によくできた内容だ。

なぜならば、弁明させる時に議決権者からプレッシャーをかけることが可能だからだ。もし、義務違反者が心を入れ替えて、それ以上の共同の利益に反する行為を止めることを約束させることができれば、無駄に裁判所へ行く必要がなくなる。

もし、約束が破られたとしても、決議により裁判所に訴える手段で強力に対抗していけばいいだけなので心理的にはそれなりの抑制効果が期待できるはずだ。

ポイント

  1. 使用禁止の期間は永久ではなく、裁判所によって相当の期間が定められる
  2. 使用禁止の対象となった専有部分を賃貸に出す事は許される
  3. 使用禁止の請求は、区分所有者だけでなく賃借人に対しても有効

裁判所によって定められる相当とされる期間は判決にもよるが最長で数年といった期間になると言われている。また、違反者が専有部分の違反者であった場合には、実質的には、空き家にしておくか、賃貸に出すか、転売するかの選択肢を持つことになる。
 

この区分所有法第58条の権利を実行していくのは、マンションにとっては本当に不幸な事態となる。そうならないためにも、こういった「使用の禁止」を法的に請求し、実行に移していけることを住人に認知させておくことで、あらかじめ心理的な抑制を図る方がスマートな管理方法に違いない。