民泊は簡易宿泊所の位置づけ

社会問題と化している民泊サービスだが、本日(2016年1月13日)厚生労働省などの検討会において、民泊を許可制が必要となる「簡易宿泊所」に位置づけるコトでおおむね意見が一致したようだ。カプセルホテルなどのような業態と同じ位置づけというコトになる。この決定は、端的に述べると「国として民泊サービスを受け入れる方針」というコトではないか。

民泊反対派の住民が取れる対応策

静かに暮らしたい共同住宅の住人にとっては不安な事態に違いない。これまでは、旅館業法に違反するなどとして保健所や警察に通報する方法があったが、合法化されることによってこのような方法が通用しなくなる。許可制ということになっているが、簡易宿泊所ということもあり、許可を取ること自体はそんなにハードルが高くないようだ。

旅館業法施行令1条3項では以下のように構造設備の基準が設けられている。

  1. 客室の延床面積は、33平方メートル以上であること
  2. 階層式寝台を有する場合には、上段と下段の間隔は、おおむね1メートル以上であること
  3. 適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること
  4. 当該施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障をきたさないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる規模の入浴設備を有すること
  5. 宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の洗面設備を有すること
  6. 適当な数の便所を有すること
  7. その他都道府県が条例で定める構造設備の基準に適合すること

上記1~6は最低ラインを定義しているのだろう。7つ目には、各都道府県で定める条例に沿う必要があるので、反対派の方は管轄の保健所に聞いてみると良い。そのついでに、下記のような要件があるか是非とも確認されたい。

「簡易宿泊所の届け出をする際に、マンションの管理規約や他の住民承諾書等を一緒に提出する必要があるか?」というものだ。

なぜならば、自治体によってこの要件があったりなかったりするからだ。もし、こういった承諾書等の要件がある場合には、反対派には有利だ。管理規約等で民泊サービス禁止条項を盛り込むことで、簡易宿泊所の許可そのものをブロックすることが可能となる。許可なしには、民泊サービス自体が合法的に営業できなくなるため、サービス提供者にとっては致命的な状況となる。規約変更等に関する内容は過去の述べた通りだ。 

では、不運にもアナタの隣人が簡易宿泊所の許可を取得してしまった場合だ。このケースにおいても基本的に取り得る対抗処置はやはり規約等の改正だ。具体的に民泊サービス提供を禁止する旨を盛り込み、区分所有法第6条にある「共同の利益に反する行為」として定義付けてしまうことだ。そうすることで、違反した場合に差し止め請求等で法的にアクションを起こすことができる。そしてこういったアクションができることを民泊サービス提供者に周知させることだ。

 

民泊サービス提供者の処置

正式に法令が施行されたあかつきには、何が何でも簡易宿泊施設の許可を取得することだ。自治体から、他の住人からの承諾書や規約の提出が求められる地域においては、先に管理組合に掛けあえるようにきちんと対応策を練った上で、そのマンションで民泊サービスが行えるように許可を貰うコトだ。

対応策は各々のマンションで事情が違ってくるコトになるが、基本的には反対派が危惧する点をクリアする対応策が求められる。ゴミ捨てのマナーや、夜中に騒ぐなどの諸問題は、海外の宿泊者に対して厳守させる仕組みを構築すればいいだけだ。日本のマンション事情と共に、最低限厳守する必要のあるルールを英語か中国語などで宿泊者が理解できるようにし、違反の場合は利用サービス上のサイトにおいて評価を下げると告げるだけでも抑制効果はあるはずだ。

言葉も文化も違う海外の旅行者が、超ローカルなコミュニティを成すマンションという共同住宅の一室に宿泊するのだから、部屋の提供者は色々と配慮できることを考えて、きちんと行動に移す必要がある。それも含めて、オモテナシというものだ。

こういった対応策では管理組合が応じてくれないのであれば、毎月の管理費アップを飲む形にして、実質的に実利を渡す方法も考えられる。管理費等の増収は、定期的に大規模修繕等を実施するマンションの管理にはとても有益なことだ。これは、他の住人にとっても修繕積立金の増加抑制につながるため、Win Winだ。

まとめ

行政が民泊サービスを容認する方向で舵を切る以上は、簡易宿泊所の許可が下りる部屋があるマンションに関しては、白黒つけるのではなく、双方の利害を調整し、共存できるようにしけるようにするのが一番の近道かもしれない。