マンションの民泊利用への対処法

(2016年1月3日寄稿の記事です)

2015年に入ってから騒がれ始めているマンションの民泊利用について、マンションの為に制定された区分所有法の観点から対応方法を記す。

民泊は苦情原因になったりとネガティブな情報が先行している。ニュースにも取り上げられているとおり、規約改正の必要性についても議論されている。だが、結果的に判例(2016.5.24)が一つ出たおかげで、特別な条項は必ずしも必要ではないようだ。

 

適応される条文の存在

区分所有者の権利義務等の項目には、すでにこういった問題等を避けるべく、共同の利益を守るための条文が存在している。結論から述べさせていただくと、複雑な規約改正の必要性は見当たらない。というのも、新たに決まった自治体が運営するルール上は、管理規約で民泊が禁止されていないという前提条件があるからだ。民泊を明確に禁止する条項を管理規約に盛り込めば自治体からの正式な認可は降りない。

問題は、無認可で営業する人が出てきた場合だ。警察に通報する方法もあるが、刑事ではなく民事であるこういった問題をどこまで親身に対応してくれるかは疑問が残る。しかし、区分所有法には共同の利益に反する行為を禁止する条文が存在している。 

区分所有法第6条1項

区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。読んで字のごとくといったところだろう。そして、第3項も合わせて見て欲しい。

区分所有法第6条3項

第1項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下「占有者」という。)に準用する。
 占有者は、賃借人だけでなく車などを一時的にレンタルする人をも指す言葉だ。日本の法律上、この賃借期間の最短期間が定められていないため、レンタル同様に1日だけ専有部分を有料で借りる民泊サービス利用者も占有者として扱われることになる。

 

民泊サービス反対者からの対応視点

この視点からの対処法はシンプルだ。上記に示す条文や、アナタの住むマンションの管理規約に専有部分を住宅用途にしか使ってはならない条文を杓子定規的に扱い、利用細則も絡めて、専有部分の民泊利用を禁止してしまえば良い。違反者に対しては、共同の利益に反するとして差し止め請求することも可能だ。差し止め請求は、議決権の過半数が必要となる普通決議により訴訟に持ち込むことも可能となるため、それなりの抑制力を発揮してくれる。

民泊サービス賛成者(運用者)からの対応視点

民泊利用サービスそのものを排除できる条文があるため、同サービスの賛成者となる運用者にとっては非常に劣勢と言えるのが現状だろう。管理規約に民泊を明確に禁止する条項があるなら民泊営業は完全にアウトだ。残されたチャンスは、管理規約にその条項がないことを前提として、他の区分所有者から理解をもらう方法となる。

 
例えば、マンションの共用部分である駐車場に空きスペースがあり、管理組合の収益事業として、マンションの区分所有者以外の第三者に有料で貸し出すケースだ。こう言ったケースは決して珍しいものではなく、空いたスペースを収益事業に活用しているにすぎない。そうすることで、管理組合が潤うことにつながっている。

アナタが民泊サービスの運営によって得られる収益の一部を管理組合に収めることで同じような合理性が追求できる余地があるかもしれない。要は「共同の利益」に反転させるアイデアを他の住人に理解してもらうのだ。反対者にとっての本質的な問題は、見ず知らずの人に出入りされ、夜中に騒がれたりするなどの迷惑行為を隣人にさらされる事を恐れていることにある。こういった事態に発展しないようにするための対処を記した誓約書等も大きな説得材料になるのではないか。

マンションの共同利益とは

各々にとっても、各マンションによっても事情や状況は大きく異なり、当然に民泊利用において「共同の利益」となるのか、「共同の不利益」となるかはケースバイケースだ。一度集会で、各区分所有者がどのように考えているのか意見交換してみるのが好ましい。

注意点としては、くれぐれも焦った決議をしないようにすることだ。禁止する場合も、そうでない場合においてもそれぞれメリットデメリットがあるからだ。工夫の仕方によっては管理組合の収益事業にし、毎月の管理費低減に繋がれば所有者全員の利益となる。