マンション管理組合の理事長(管理者)を解任する方法

マンションの区分所有者を代理しているのは、「理事長」という立場にある人間だ。管理組合法人の場合はその法人自体が区分所有者を代理しているが、いずれの場合も最高意思決定機関の長を務めるのが「理事長」ということになっている。

この理事長という立場の人間が情報隠蔽工作などによって不正を働いていたり、または、不正の疑いなどがあって、理事長という立場が相応しくない場合が発生する。そういった場合に、「理事長」という役職から解任する方法が総会(集会)のみに限られるかといえばそうではない。各区分所有者が個別にアクションする手段がある。

 

区分所有法第25条2項

管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。

上記条文は「管理者」に関する内容となっているが、マンション標準管理規約においては、管理組合の理事長を「管理者」としている。管理規約に制限がなければ、総会決議によって、管理会社やマンション管理士が管理者となることも可能となっているが、日本全国のマンション管理組合の理事長が「管理者」を務めているケースがほとんどだ。

具体的なアクションとしては条文にある通り、裁判所に「請求」することで解任に導いていくこととなる。あくまでも「請求」である点に気を付ける必要がある。これは、「請求」に応じて「裁判所によって合理的に判断される」ものだと考えなければならない。すなわち、合理的に判断するための材料となる証拠が必要になる。

 

理事長と管理者の役割

裁判所に解任を請求する以上は、不適切とする材料が必要になる。そのためには、理事長と管理者において定められている役割を知る必要がある。これらと照らし合わせ、裁判所に対して合理的な理由をもって請求しなくてはただ単なる請求では功を奏しない。

 

標準管理規約第38条 (理事長)

  1. 理事長は、管理組合を代表し、その業務を統括するほか、次の各号に掲げる業務を遂行する。一 規約、使用細則等又は総会若しくは理事会の決議により、理事長の職務として定められた事項 二 理事会の承認を得て、職員を採用し、又は解雇すること。
  2. 理事長は、区分所有法に定める管理者とする。
  3. 理事長は、通常総会において、組合員に対し、前会計年度における管理 組合の業務の執行に関する報告をしなければならない。
  4. 理事長は、理事会の承認を受けて、他の理事に、その職務の一部を委任することができる。 

副理事長、(平)理事、監事に関しても標準管理規約では定義がなされているので、興味のある方は過去の記事を参考にしてほしい。 

区分所有法第26条(1項と2項)

管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。

管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。

上記1項にある「第二十一条に規定する・・・」の箇所は、共用部分に関する規定の準用なので、今は読み飛ばしてもらって問題ない。要は、「管理者は共用部分をきちんと管理しなさいよ、それを実行する権利も義務もありますよ」という内容になっている。 

最後に

解任するための手段があるものの、共同住宅という特性上同じ建物に一緒に住み続けなくてはならない側面は無視できない。エレベーターやメールボックス前で顔を会わせるたびにお互いが気まずくなるコトは容易に想像がつく。

本来はこういったアクションを取らなくても良いように日頃から管理に目を向ける必要がある。手遅れになってからのアクションよりも労力が少ないのは言うまでもない。その上、自分の資産がどのように管理され、運営されているのか知るのは区分所有者として当然の義務だ。

合理的な運営かそうでないか。そう言った視点を持つだけで十分だ。専門的なことはインターネットで調べればある程度は理解できる素材が揃っているし、マンション管理士や委託先の管理会社に質問すればいいだけだ。あとは、その情報をもって、どのように運営に活かしていくかは区分所有者に委ねられている。